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渓流釣りでクマと遭遇しないために

すわ

楽しい釣りもケガや事故があっては台無しですね。

渓流釣りは山へ入っていくことが多いのでクマ対策も安全対策の重要な項目の一つとなります。

クマと互角に戦える人はそうそういません。

当然ですがクマと遭遇しないことが大切であり、そのためにできる最大限の対策を行うことをおすすめします。

この記事では、危険な兆候や対策グッズの有効性などについて、クマの特性に基づいて解説していきます。

クマ対策についてよくご存じない方はぜひ参考になさってくださいね。

クマを知ろう~行動の特徴~


クマ対策を考えるにはまず相手のことを知っておくことが大切です。

オス・メスの違いや季節によって活動内容の傾向に違いがあることを知っておきましょう。

季節による違いと傾向

季節によって食べものと活動の傾向が変わってきます。

春はブナの葉や樹木の花などを食べますが、冬眠明けしたばかりの頃は動きがあまり活発ではないようです。

5~6月になってくると食べる量が増え活動量も増えます。

加えて6月はクマの交尾期になるので雄グマは気が立っている傾向にあり、遭遇すると厄介です。襲われなかったものの何時間もつけ回されたという人もいます。

7~8月はキイチゴなどの甘い実や昆虫類を食べるようになります。お腹が満たされるせいか比較的落ち着いている時期といえます。

9月以降は冬眠に向けてサルナシやヤマブドウやドングリなどを食べて脂肪を蓄えます。広範囲に活動を広げる時期でもあります。

また子連れのクマ=危険というイメージがあるかもしれません。しかし4~6月頃に生まれて数カ月の子グマを連れている場合はそうともかぎりません。

子グマがまだ小さく動きも緩慢なので、母グマはなるべくほかのクマや人間との遭遇を避ける傾向にあり慎重です。万が一遭遇しそうになっても気づいたらすぐ逃げていくことが多いようです。

ただし、6月の交尾期になると雄グマが子グマを邪魔と判断し殺すこともあるので母グマは敏感になっています。

そして7月頃になってくると子グマの動きが活発になるので母グマの動きも変わってきます。人間に興味を示して子グマが近づいてくる危険性も出てきます。

また2歳くらいの親離れ直前の子グマの場合は、訓練のために積極的に攻撃してくる時期でもあります。

クマ遭遇の事故が多い時期とは

クマの事故で1回目のピークが6月です。

6月は活動量の増加・交尾期というクマの習性と合わせて梅雨で雨が多いということも考えられます。

そして雨の音でお互いの存在に気付きにくく鉢合わせしやすくなります。

2回目のピークは9~10月です。

エサを求めクマが広範囲を移動していることが要因と考えられます。

ツキノワグマは川へ来て魚を捕るということはしないので、川にいるときは比較的安心と思うかもしれませんがそうとはかぎりません。

淀みに集まったドングリを取りに現れることもあります。そのような状況があったら注意しましょう。

天候による行動の違いもあるようです。

連日雨が降ったあとに晴れた日は、人間と同様にクマも活動的になるようで事故が増える傾向があります。

こんなときは要注意!クマが近くにいるシチュエーション


クマが活動している場所にはその痕跡があることがあります。
遭遇しないために注意したいシチュエーションを知っておきましょう。

・樹木の爪痕
・枝の折れあと
・フン
・足跡

これらがまだ新しい場合は近くにクマがいる可能性が高いです。

また、クマ棚(木の上に折れた枝が集まっているもの)はクマがその木に通っている証拠でもあり危険なポイントです。

シカなどの動物の死体の上に枯れ葉がかぶせてあった場合は、クマが占有物として大切に保管している可能性があり、監視しているかもしれません。みつけたら近づかずにすぐ離れてください。

渓流釣りでクマに遭遇しないために


渓流釣りでクマに遭遇してしまわないためにはどうするとよいのでしょうか。

あらかじめしておくことや対策グッズについてご案内します。

情報収集をしよう

釣り場を決めたら通るルートを確認しておきましょう。そのルートが一般ルートであれば、クマが出没する可能性は低くなります。

また、ネットで公開されているクマの出没情報の確認も大切です。最近出没しているようであれば別ルートを検討してくださいね。

危険な行動を知ろう

早歩きは危ないので注意が必要です。お互い死角にいて気付かないうちに近づいてしまう可能性があります。

クマが逃げる余裕もないと威嚇・攻撃と発展しかねません。歩く時は常に周りに注意しながら進んでください。

また、穴があった場合に興味本位で覗くととんでもない目に遭うことがあります。穴からクマが飛び出してくるという事故も起きていることを忘れないでください。

対策グッズの有効性について

クマ研究をしている人たちの意見を参考に、クマとの遭遇を防ぐ対策グッズについてご案内していきます。

■オススメできないグッズとその理由

ラジオを携帯するという人もいますが、常に音が出ているためクマの出す音が聞こえにくいというデメリットがあります。またラジオに聞き入ってしまい注意力が低下してしまうこともあります。

またナタもオススメできません。渓流釣りでナタを持ち歩く人は少ないと思いますが、クマ対策にナタを持つ人もいます。ナタでクマを攻撃した場合、逆上し反撃されて大ケガになるケースが多いことを考えるとやめておいたほうがよいでしょう。

■オススメしたいグッズ

クマを遠ざけるために山や藪に入るときに爆竹で音を出すことは有効な手段です。笛は携帯しやすい点が魅力的です。

爆竹を使う場合は導線が長いクマ用のものを使いましょう。ネット通販で購入することができます。

 

笛は時々吹く必要がありますが、鈴を付けていればその必要がないので鈴も合わせて携帯すると良いですね。

鈴もクマ対策用のものがあります。

 

ただしクマにも個体差があり、稀に人間に興味を持っているクマがいます。

その場合これらのグッズは有効ではないこともあるため、絶対に安全というものではありません。

もしもクマと遭遇してしまった場合に備えて、クマ撃退用のスプレーを携行するのをお勧めします。

マナーを守ろう

クマが人間に興味を持ってしまうのは人間側にも原因があります。

過去に人間が残した残飯などを食べて、「人間はおいしいものを持っている」と思っていると厄介です。

山や河原で残飯やゴミを残さないことは釣り人としてのマナーでもあり、今後の安全にもつながることですね。

また調理する場合はその後処理も注意しましょう。

食料品を持ち歩くときは、ニオイを遮断する袋などに入れておくことをオススメします。

クマに遭遇してしまったら


クマと遭遇しないよう対策を打っても100%安全とはいかないものです。クマに遭遇した場合の有効策・対処法もご紹介します。

マタギの対応策「木化け」の技をぜひ知っておいてください。

クマ研究者オススメの対応策

ご存じの方も多いと思いますがクマに背を向けることは危険です。まずは背を向けず動かないようにしましょう。

2キロ四方のニオイが分かるともいわれているクマですが、目はあまりよくないようです。マタギがやっている「木化け」という技をご紹介します。

クマを刺激しないように落ち着いて、ゆっくりとすり足のようにして後退し距離を広げていきます。これは欧米でも推奨されている対応策です。

そしてゆっくりと木の間に隠れるのです。そのままじっと動かずにいると目が良くないクマはやがて人間を見失うそうです。

できれば幹の低いところで枝分かれした木の後ろが好ましく、幅が20センチほどの細い枝と枝の間から顔を出せるのが理想です。

こちら側の視界を確保することもでき、万が一気付かれて襲ってきても幹や枝で身体を守りやすいためです。

更に利き手にクマ撃退スプレーを構えつつクマが退散するのを待つのがいいですね。

注意したいのは、横に動かないことです。クマは前後の動きを捉える能力は低いのですが、横の動きについては敏感に感じ取るからです。

また前足を揃えて飛び出そうとしているときは威嚇態勢です。木化けができない状況であれば、タモなどを頭の上に掲げてグルグル回すと驚き、とても大きい相手だと勘違いして逃げていくことが多いようです。

身を守る防御姿勢

クマに遭遇したら死んだふりはNGという話は聞いたことがあると思いますが、死んだふりとは少し違った対処法があります。現代のクマ研究者達が推奨している「防御姿勢」です。

クマが襲ってきてこちらが木化けやスプレーなどをできる状況でない場合、被害を最小限に抑える方法です。

クマが人を襲うとき最初に高確率で狙ってくる顔や首と、弱い部分である腹部を守ります。

まずは首の後ろで両手を組み、肘を額のほうへもっていくことで首と耳や顔の側面を腕でガードします。その状態で地面に伏せて腹ばいになります。

クマが人間を襲うときは防御目的で、短時間で終わることがほとんどです。短時間の攻撃の間に急所を守り耐えるためのものです。

こちらに害がないと判断しクマが退散したらすぐにその場を離れましょう。クマが様子をみに戻ってくる場合があることを忘れないでくださいね。

まとめ

基本的にクマは木の実や葉などを好むので、積極的にほかの動物を襲うことは稀です。人間がいることに気付けばクマ側から去っていくことがほとんどのようです。

クマの特性を理解し、山に入るときは「クマのテリトリーに入っている」という意識を持って慎重に行動しましょう。

またせっかく用意した対策グッズもカバンにしまいこんでいては役に立ちません。必要な時にちゃんと使えるようにしておくことが大切です。

状況もさまざまでクマにも個体差があるので100%安全な策というものはありませんが、正しい行動がとれるようにし、楽しい釣行になるようにしたいものですね。

参考文献
羽根田治(2017)『人を襲うクマ』 山と渓谷社.
米田一彦(2017)『熊が人を襲うとき』 つり人社


画像引用元:https://www.photo-ac.com