アユの冷水病っていったいなに?冷水病のアユは食べても大丈夫?

中田 北斗

アユの冷水病という病気について知っているでしょうか?
冷水病はアユを死に至らしめる致死性の病気です。

「冷水病になったアユにはどんな症状がでるの?」
「冷水病になったアユを食べても大丈夫?」
「アユ以外は冷水病にならないの?」

といった疑問をお持ちの方のために、アユの冷水病について解説していきましょう。

アユ釣りをする人には間違いなく必要になる知識なので、最後までチェックしてみてください。

アユの冷水病ってどんな病気?

クニトウアオさんによる写真ACからの写真

アユの冷水病というと、アユ釣りをしている人なら誰でも知っているほど有名な病気です。

しかし、冷水病がどのような原因で引き起こされるのかや症状などについてはあまり知らない人か多いのではないでしょうか?

冷水病について詳しく知らない方のために、まずは冷水病の原因と症状についてみていきましょう。

冷水病の原因と症状

冷水病は「フラボバクテリウム・サイクロフィラム」という病原菌が原因で引き起こされる細菌性の感染症です。

冷水病は感染するとすぐに発症するわけではなく、しばらく保菌した状態が続き、水の濁りや大きな水温変化などが引き金となって発症する場合が多いようです。

国内では5月〜6月に冷水病を発症するアユが多く、これは水温が「フラボバクテリウム・サイクロフィラム」の活動に適している16〜20℃程度になるからと考えられています。

冷水病を発症すると、体表が白く濁り、その後エラから出血し、体表に潰瘍性の穴があいて、それが原因で貧血を起こし、死んでしまいます。

冷水病が発症したアユは、体に傷のような穴があいているため見分け方はとてもかんたんです。

アユの生息数が多い琵琶湖の河川では、体に穴があき弱ったアユが上流から流れてくることも珍しくありません。



冷水病にはどうやって感染するの?

国内での冷水病は、琵琶湖で生産した稚鮎の養殖や放流が原因といわれていますが、琵琶湖に冷水病がもちこまれた経緯などは判明していないというのが現実です。

冷水病の病原菌である「フラボバクテリウム・サイクロフィラム」は、水の中であれば生きられることで知られています。

そのため、冷水病に感染したアユを、冷水病が確認されていない河川に放流してしまうと冷水病が広がってしまうのです。

この感染力の強さが近年大きな問題になっています。

おとりアユの持ち込みが大きな問題に

冷水病の感染ルートとして、おとりアユが大きな問題となっています。

アユ釣りでもっとも一般的な釣法である「友釣り」では、おとりアユを取り付けて釣りをしますが、このおとりアユは釣具店などで購入するのが一般的です。

販売されているおとりアユは養殖されたものが一般的ですが、このおとりアユが冷水病を保菌している場合があります。

すでに冷水病が確認されている河川でのアユ釣りをする場合は大きな問題にはなりませんが、まだ冷水病が確認されていない地域で釣りをする場合は、おとり鮎が原因で感染を広げてしまう可能性があります。

また、冷水病を保菌していたアユを入れた引き舟(おとりアユを生かしておくためのカゴ)についた菌も感染の原因になる場合もあるようです。そのため、引き船の洗浄・殺菌しなければ、おとり鮎が冷水病を保菌していない場合であっても感染を広げてしまう可能性も出てきてしまいます。

複数の河川でアユ釣りを楽しむ場合は、冷水病を広げないためにも「他の河川で釣ったアユを使わない」、「道具の洗浄・殺菌を徹底する」などの釣り人の意識が大切になってくるでしょう。

釣り人の長靴が原因で感染した例も

驚くことに冷水病は、釣り人の長靴やウェーダー、たも網などが原因で感染を広げてしまう可能性もあるようです。

冷水病の感染を広げないためにも、複数の河川でアユ釣りを楽しむのであれば

  • 道具の洗浄・乾燥
  • アルコールを用いた道具の消毒

は行うようにしましょう。

冷水病に他の魚は感染しないの?

dora2さんによる写真ACからの写真

冷水病が水中でも生存できる菌と聞くと、冷水病はアユ以外の魚には感染しないの?という疑問が湧いてきますよね。

結論から言うと、他の魚も冷水病に感染することがわかっています。

そもそも、冷水病は北米のサケやマスの病気として知られており、日本へ冷水病が持ち運ばれた経緯は、養殖物のギンザケの卵が北米からの輸入だとする意見が最も有力です。

サケやマス以外の魚であるコイやフナ、ブラックバス、カジカなど、平成10年~14年の間に実施された水産庁の調べでは、31種類の魚種で冷水病が確認されています。

しかし、病原菌の遺伝子分析の結果から魚種ごとにそのルーツが異なることがわかっており、異魚種間での感染はしないと予想されています。そのため、アユ以外の魚がアユの冷水病の感染ルートとなっている可能性は低いと言う声も上がっています。

冷水病の感染ルートには謎が多く、不明とされている部分が多いのが実情です。

人に冷水病は感染しない?冷水病のアユを食べても大丈夫?

gulamiさんによる写真ACからの写真

アユを死に至らしめる冷水病の話を聞くと、冷水病を発症したアユや冷水病を保菌しているアユを食べても大丈夫なのか気になりますよね。

冷水病に感染したアユを食べても、人間が感染することはないと考えられています。なぜなら、冷水病の病原菌は25℃以上で発育が止まるからです。

人間の体温は36℃前後あり、人間の体内では冷水病の病原菌は数が増えることはありません。

ただ、冷水病を発症してしまったアユの場合は、見た目が悪く、食欲を害する場合がありますので、気になる場合は切り落として食べるなどすればいいでしょう。

また、冷水病に感染したアユを生食しても前述のとおり問題ありませんが、気になる場合は塩焼きにするなどして火を通したほうが安心できます。

冷水病の対策は?

冷水病の対策は、農林水産省が「アユ冷水病対策協議会」を立ち上げるなどもしています。

ワクチンなどの開発も進められていますが、残念ながら十分な効果を見込めるものは開発できていません。

冷水病に感染したフグやタイといった高価な魚には、抗生物質が投与される場合もあるようですが、アユはフグやタイなどに比べ価格が安く、費用対効果の面で抗生物質が投与されることはほとんどないようです。

抗生物質を利用した冷水病の抑制は短期的に見れば効果があるようですが、長期的に見ると抗生物質への耐性を持った耐性菌が発生するリスクもあり、抗生物質の利用を疑問視する声もあがっています。

いずれにせよ、冷水病の根本的な対策は確率されておらず、なおかつ自然終息も難しいとされており、冷水病とはまだまだ戦っていかなければならないようです。

我々ができることは、これ以上冷水病の感染拡大を防ぐために、道具の洗浄・殺菌などをしていくことが大切となるでしょう。

アユ釣りをするなら冷水病についてしっかりとした理解を

冷水病は、アユを死に至らしめる深刻な病気です。

すでに冷水病が蔓延してしまった川に対して我々ができることは、残念ながらあまりありません。

しかし、冷水病がさらに広まりを抑えることは、我々一般人であってもできることは多いです。

アユ釣りなどをして川で遊んだら、別の川に遊びに行く前に

  • おとりアユには別の河川のアユを使わない
  • 道具の洗浄・乾燥
  • 道具のアルコール消毒

を徹底するようにしましょう。

これだけで冷水病に感染していない河川への広がりを高い確率で阻止できます。

少し手間ではありますが、アユたちの命を守るためにも心がけてみてください。



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