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ブラウントラウトの料理

神前樹

世界中でゲームフィッシュとして人気のブラウントラウト。日本ではあまり馴染みがありませんが、とても美味しい魚です。

欧州各国のブラウントラウトに良く合う調理法を、ドイツ在住の調理師である筆者が紹介します。

【もくじ】
1 ブラウントラウトはニジマスよりも高価?
2 やっぱり高価なブラウントラウトの方が美味しい?
3 生食の場合は寄生虫に注意 対策方法について
4 おすすめ調理法
 ①ムニエル(フランス料理)
 ②カルパッチョ(イタリア料理)
 ③フィッシュ&チップス(イギリス料理)
 ④ポワレ(フランス料理)
 ⑤アクアパッツァ(イタリア料理)
5.まとめ

 



1 ブラウントラウトはニジマスよりも高価?

世界中で人気のゲームフィッシュ、ブラウントラウト。日本でもルアーフィッシングやフライフィッシングのターゲットとして人気のある魚ですが、実は原産地のヨーロッパでは、食べて美味しい高級魚として親しまれています。特にフランスではトルイット・ファリオ(Truite fario)と呼ばれ、星が付くレストランでも扱われているほどです。

(ドイツのレストランの飼育されているニジマスの様子。あまり魚を消費しないドイツでは養殖のブラウントラウトの流通が特に少ない。)

フランスを主にドイツやオーストリアなど、主に食用目的で養殖が行われているのですが、北米原産で同じトラウト属の”ニジマス”と比べても、成長が遅く、養殖が難しいことから、取り扱っている業者が少ないのが高価な値段がつく大きな要因です。

 

2 やっぱり高価なブラウントラウトの方が美味しい?

味に関しては、決して安価なニジマスが劣るという意味ではありませんが、ブラウントラウトはニジマスに比べて少し油が少なく、さっぱりとして上品な味わいをしています。

好みや個体にもよりますが、油の乗ったサーモンのような身が好きな方はニジマス。反対にブラウントラウトは、油が乗った身が苦手な方でも美味しく味わうことができるようなイメージです。

もちろんニジマスにはニジマスによく合う料理が、ブラウントラウトにはブラウントラウトによく合う料理があるので、こちらではブラウントラウトによく合う料理を5種類紹介しようと思います。

なお、ニジマスによく合う料理法も過去の記事で紹介しています。ブラウントラウトにも対応している料理を紹介しているので、ぜひそちらもご覧ください。

 

3 生食の場合は寄生虫に注意 対策方法について

養殖個体ももちろんですが、特に野生の個体は寄生虫に注意する必要があります。寄生虫とだけ聞くとなんだか食べる気を無くしてしまいそうですが、基本的には他の多くの魚にも寄生虫は居るので、それほど怯える必要はありません。また対策も簡単に可能なので、ブラウントラウトのみならず、他の魚にもぜひ実践してみてください。

3.1 冷凍、または加熱で対策可能

基本的に一度冷凍、または加熱処理をすれば寄生虫は死滅してしまいます。簡単ですが、最も確実な寄生虫対策です。寄生虫を完全に殺すために、完全に火を通しきること、完全に芯まで冷凍してしまうように意識しましょう。
なお、冷凍方法ですが、切り身をラップに包んで冷凍室の平行な所に入れておけばOKです。この時にラップを二重にしておくと、冷凍庫内でラップが割れて身がむき出しになるのを防ぐことができます。

3.2 味を損なわない解凍方法

もちろん生食する際も一度冷凍したものを使うようにしましょう。一度冷凍すると身が水っぽくなって味が損なわれてしまうという意見もありますが、解凍方法を工夫することによって対策が可能です。

3.2.1 冷蔵庫で解凍する

いきなり温度の高い外気に晒して解凍してしまうと、身が水っぽくなってしまいがちです。少し時間はかかりますが、料理する前日などに冷凍庫から冷蔵庫にうつして時間をかけて解凍するようにしましょう。

3.2.2 解凍中に水気をとる

冷蔵庫を利用して、温度の変化を最小限に抑えたとしても、ドリップと呼ばれる液体が魚の身から出てしまいます。ラップを外さずにそのままにしておくとドリップを身が吸って水っぽくなる原因になりますので、ある程度解凍できたらラップをはずしてキッチンペーパーで軽く包み、皿などの上に置き変えましょう。

 



4 おすすめ調理法

魚鬼さんによる写真ACからの写真

ここからはブラウントラウトによく合う料理法をお伝えしたいと思います。ニジマスに比べて油が少なくてあっさりとした魚なので、よく合う料理も少し異なってきます。

 

4.1 フランス料理 ムニエル

トラウト属の鉄板調理法ですね。ブラウントラウトは油が少ないこともあり、ニジマスに比べて少し焦げ付きやすいので注意しましょう。

〜作り方〜

1 皮付きのまま切り身にしたブラウントラウトに塩とコショウを適量なじませ、10〜15分ほどおいてから、ドリップを拭き取って小麦粉を全体に薄くまぶします。魚が小さい場合はウロコ付きのままでもOKです。

2 軽く油を引いて(オリーブオイルがおすすめ)熱したフライパンにバターを溶かし、ブラウントラウトを皮面から中火で焼いていきます。

3 皮面がパリッと焼けたらひっくり返して反対側を焼き、中まで火が通れば完成です。

シンプルですが、最も定番の調理法ですよね。調理する前に香草と一緒にラップに包み、香りをつけたりと、自分なりにアレンジして楽しむのもオススメです。ニジマスに比べて香りがつきやすいので、添える香草は少なめしましょう。

 

4.2 イタリア料理 カルパッチョ

カルパッチョはニジマスに比べてもブラウントラウトのさっぱりとした身質がよく合う調理法です。素材の味が顕著に出るので、解凍方法に注意。

〜作り方〜

1 皿の上にレタスやオニオンスライスなどの野菜を敷きます。ルッコラやニンジンを薄くスライスして使うのもおすすめです。

2 薄くスライスしたブラウントラウトを野菜の上に盛り付け、レモン、バジルを上に盛り、ドレッシングをかけて完成です。

ニジマスに比べてレモンやバジル、ドレッシングなど、味や香りの強いものは少なめでOKです。ドレッシングは好みのものでOKですが、筆者のおすすめは”キューピーイタリアンドレッシング”です。

 

4.3 イギリス料理 フィッシュ&チップス

代表的なイギリス料理、フィッシュ&チップスにもブラウントラウトはよく合います。小さな切り身にすると食べやすいですが、半身を丸々使うと本場感が出るのでおすすめです。

〜作り方〜

1 薄力粉50g、片栗粉50g、ベーキングパウダー小さじ1/2、塩胡椒適量をしっかりと混ぜて、さらにビール100g入れて衣を作ります。他の材料を混ぜる前にビールを入れてしまわないように注意しましょう。

2 少し塩胡椒をなじませたブラウントラウトをしっかりと衣になじませてから、180℃前後まで熱した油でこんがり色がつくまで揚げて完成。

3 ジャガイモがあればカットして、同じ要領で揚げてポテトを作りましょう。

塩をかなりしっかりとふりかけて、それをレモンで洗い流すようにして食べるのが現地流ですが、あまり体に良くないので、ふりかける塩は少なめにしましょう。
なお、調理で使用するビールは炭酸が完全に抜けたものでもOKです。料理のために開けるのは勿体無いので、前日開けたはいいけど飲みきれなかった缶ビールなどを使いましょう。

 

4.4 フランス料理 ポワレ

カバ キチさんによる写真ACからの写真

フランスを代表する魚料理の1つであるポワレ。スズキなどの白身魚が使われることが多いですが、実はブラウントラウトにもぴったりな料理です。

~作り方~

1 皮付きのまま切り身にしたブラウントラウトに塩とコショウを薄くなじませて、10分ほどおく。この時にコショウの量は塩よりも少なめにしましょう。

2 軽く油を引いて(オリーブオイルがおすすめ)熱したフライパンで皮面から焼いていく。

3 皮面がしっかり焼けたら、身を返して白ワインを入れ、蓋をして3分ほど蒸し焼きにして完成。

ワインの香りを際立たせるために、塩胡椒の味付けは少なくしましょう。また、焼き上がりをふわっと仕上げるために、感覚的にですが、皮面を焼く段階で8〜9割は焼き上げてしまうようにしましょう。

 

4.5 イタリア料理 アクアパッツァ

イタリア料理の定番アクアパッツァ、海の魚を使うイメージですが、トラウト類でも対応可能です。

~作り方~

1 皮付きのまま切り身にしたブラウントラウトに塩とコショウを適量まぶして、10分ほど置く。

2 軽く油を引いて(オリーブオイルがおすすめ)熱したフライパンで両面をしっかり焼く。

3 ワインで香りをつけてから、トマト、にんにく、パセリ、あさり等を適量入れて、水を加えて蓋をして少し蒸す。仕上げに少しパセリをかけて完成です。

タイやメバルなど味の濃い魚に比べて少しスープに味がつきにくいので、最初の段階から中骨を入れると味が濃くなるのでおすすめです。また入手のしやすさからアサリで説明していますが、ムール貝で作るのもおすすめですよ。

 

まとめ

魚鬼さんによる写真ACからの写真

今回はブラウントラウトによく合う料理をいくつか紹介しましたが、どれもとても簡単に料理できるものばかりです。中でもムニエルやフィッシュ&チップスは失敗が少なく、初心者の入門にもぴったりです。本当に美味しい魚なので、初心者の方もぜひ試してみてくださいね。

※アイキャッチ画像は魚鬼さんによる写真ACからの写真です。

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